西洋の敗北 第7章 北欧

フィンランドとスウェーデンのNATO加盟は驚きであった。

両国とも中立国として伝統があり、第2次大戦以来フィンランドにロシアは全く手を出していない。むしろフィンランドを介して西洋と平和的な関係の構築を望んでいた。

スウェーデンに至ってはロシアは国境を全く接していない。国をまたいでスウェーデンに侵略するなどはっきりと「バカげた妄想」なのである。

この章では北欧の「ロシアへの恐怖」の起源とプロテスタンティズムの最終的崩壊こそが紛争への積極的介入の隠れた原動力であること。また、西洋の紛争介入の「フェミニスト」的側面についても触れる。

デンマークとノルウェーの朽ちている何か

ノルウェーは長らくデンマークの所有物であった。最終的に独立を手にしたのは1905年である。ノルウェーはノルドストリーム破壊に手を貸している。また、デンマークは長い間、アメリカ諜報機関の付属機関のようにふるまってきた。アンゲラ・メルケルの電話の盗聴に関与していたのは記憶に新しい。デンマークにデータの収集保管センターが建設されたが、アメリカがロシアというよりは西洋の同盟国をスパイするためのものだった。

ノルウェーやデンマークの政治家のキャリアでは首相ポストがおのずとNATO事務局につながっている。

EU委員会でのデンマーク代表はアメリカの利益の代表となっている。競争政策担当のデンマーク人マルグレーテ・ベスタエアーはアメリカ人フィオナ・スコット・モートンを同部門のチーフエコノミストに据えようとした。

スウェーデンとフィンランドの社会的興奮状態

2022年時点での人口一人当たりのGDPはスウェーデンは55873ドル、フィンランドは50536ドル、ドイツは48432ドル、イギリス45850ドル、フランス40964ドルであり、学習到達度調査でも北欧はスコアの高さで際立っている。

したがって北欧の不安は経済的なものではない。

スカンジナビア諸国における不安は「ロシア問題」以前から検知されていた。

  • ロナルド・イングルハートによる「世界価値調査(World Values Survey)」では、西洋世界全体において「市民の軍事意識」が低下していることを指摘している。ところがスカンジナビアだけは「自国のために戦う」意識が高まっていた。
  • スウェーデンでは2017年(ウクライナ侵攻のはるか前)に兵役が復活している。

プロテスタンティズムの終焉、国民の危機

宗教の消滅が国民を危機に陥れている。経済はそれほど悪くなくとも、宗教ゼロ状態が国内的不安を生み出し、ひいてはこれら小国の不安につながっている。だからこそ、そもそも存在しない「外部の脅威」を追い払うためにNATO加盟で得られる安心を求めているのかもしれない。

NATO加盟とは「ロシアから守ってほしい」という欲求ではなく、「どこかに帰属したい」という欲求だったのである。

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